アメリア航空メーカー
 第二次世界大戦当時からイギリスをしのぐ大工業国となっていたアメリカは、合理的な製造での物量作戦で各航空機メーカーが競い合う理想的な軍需体制であった。また、「パイロット養成のシステム化」、「レーダー設備の重視」「先進的な情報化システム」など、日本軍に勝つべくして勝ったという組織化された軍隊であった。第二次世界大戦前後にアメリカが生み出した軍用機は何れも頑丈で合理化されたものであった。
 そんな理想的航空機メーカー達も、戦後の冷戦時代に核軍備化・ミサイル万能化に押され、軍用機的メーカー色を失っていく。
 
グラマン社
 1929に設立され20世紀の長い期間に渡って軍用機メーカーのTOPに君臨しているたメーカー。特に米海軍戦闘機は独壇場であった。
 当初より海軍機を手がけ、頑丈で簡素な合理的設計技術から第二次世界大戦で数多くの戦闘機を生み出し、日本では「グラマン」は敵国戦闘機の代名詞であった。その戦闘機にはネコ科の動物、飛行艇には水鳥の名を愛称として付けられる事が多い。
 大戦後も傑作航空機を数多く生み出し、アポロ計画月着陸船を作ったのもグラマンである。しかし、海軍の傑作戦闘機F-14トムキャットの製造終了を最後に、経営が危うくなり、1994に同業の一つノースロップと合併してノースロップ・グラマン社となった。
≪主要な機種/第二次大戦時≫
    ・J2F ダッグ(水陸両用飛行艇)
    ・F4F ワイルドキャット(艦上戦闘機)
    ・TBF アベンジャー(艦上雷撃機)
    ・F6F ヘルキャット(艦上戦闘機)
    ・F7F タイガーキャット(双発艦上戦闘機)
    ・AF ガーディアン(雷撃機)
    ・F8F ベアキャット(艦上戦闘機)
≪主要な機種/第二次大戦後≫
    ・F9F パンサー/クーガー(ジェット艦上戦闘機)
    ・F11 タイガー(ジェット艦上戦闘機)
    ・A-6 イントルーダ(ジェット艦上攻撃機)
    ・EA-6 プラウラー(ジェット艦上電子戦機)
    ・E-2 ホークアイ(双発艦上早期警戒機)
    ・F-14 トムキャット(ジェット艦上戦闘機


ダグラス社
 当初ダグラス社は米海軍向けに雷撃機を製造していたが、さらに雷撃機をベースとして偵察機や民間航空便向けの機体なども開発し、5年もしないうちに毎年100機以上の航空機を製造するようになり第二次世界大戦時には数々の有名な軍用機を手がけた。ベトナム戦争当時に、マクドネル・エアクラフト社との合併によりマクドネル・ダグラス社となる。ノースロップ社も傘下に収めるが1997年にそのマクドネル・ダグラス社もボーイングに買収される。
 ダグラス社の航空機設計思想は、無難で頑丈な設計とそれに伴う製造工程の簡素化、耐用期間が長い機種が多い事が特徴で、前出のグラマン社と並んで米海軍で愛用された機体が多かった。

≪主要な機種/第二次大戦時≫
    ・B-18 ボロ(双発中爆撃機)
    ・DC-3 (輸送機)
    ・TBD デバステータ(艦上雷撃機)
    ・A-20 ハボック/ボストン(双発軽爆撃機)
    ・SBD ドーントレス(艦上急降下爆撃機)
    ・A-26 インベーダー(双発軽爆撃機)
≪主要な機種/第二次大戦後≫
    ・A-1 スカイレーダー(艦上戦闘機)
    ・F4D スカイレイ(艦上攻撃機)
    ・A-4 スカイホーク(ジェット艦上攻撃機)
    ・DC-10 (ジェット旅客機)


ボーイング社
 米国に存在する世界最大の航空宇宙会社。1997年に、F-4FファントムUやF15イーグル、DC旅客機シリーズを手がけたマクドネル・ダグラス社を買収したため米国で唯一の大型旅客機メーカーとなり、欧州のエアバスと世界市場を二分する巨大企業である。また民間機だけでなく、軍用機、ミサイルなどの研究開発・設計製造を行なわれている。
 1941年にアメリカも参戦した第二次世界大戦では、従来主力爆撃機とされていた双発機の能力では不十分であることが判明し、米陸軍の要求で大型旅客機設計にすぐれていた同社がB-17及びB-29の超大型爆撃機の製造を担当した。

≪主要な機種/第二次大戦時≫
    ・B-17 フライングフォートレス(四発中爆撃機)
    ・B-29 スーパーフォートレス(六発重爆撃機)
≪主要な機種/第二次大戦後≫
    ・B-47 ストラトジェット(ジェット重爆撃機)
    ・B-52 ストラトフォートレス(ジェット重爆撃機)
    ・ボイング727(ジェット旅客機)
    ・ボイング747(ジェット旅客機)


ロッキード社
 米国の航空機メーカーで、軍用機から民間機に至るまで多種にわたって著名な機種製造を手がけていけるが、第二次大戦中に活躍した純粋なローキード社製は、P-38ライトニングのみ。戦後にジェット機で数々の名作を製造。その軍用機設計の特徴はスピードに特化している事。「ノースロップ社」「コンソリーテッド社」「コンベア社」「ジェネラルダイナミックス社」「マーチン社」など、様々な航空機メーカーと、合併や吸収を繰り返し、1995年より「ロッキード・マーティン社」となっている。主要な機体でもわかるように、米陸軍(米空軍)で採用された機体が多い。

≪主要な機種/第二次大戦時≫
    ・P-38 ライトニング(双発戦闘機)
≪主要な機種/第二次大戦後≫
    ・C-121 コンステレーション(四発旅客機)
    ・F-80 シューティングスター(ジェット戦闘機)
    ・F-104 スターファイター(ジェット戦闘機)
    ・C-130 ハーキュリーズ(四発輸送機)
    ・S-3 バイキング(ジェット対潜哨戒機)

    ・SR-71 ブラックバード(ジェット電子偵察機)
    ・C-5 ギャラクシー(ジェット輸送機)
    ・F-22 ラプター(ジェット戦闘機)
    ・F-35 ライトニングU(ジェット戦闘機)


ノースアメリカン社
 第二次世界大戦中にB-25ミッチェル、P-51ムスタング、戦後のF-86セイバーなどの重要な機体を製作した米国航空機メーカー。1928年に設立され1930年代から航空機製造を行ない、戦後の1967年にA-10サンダーボルトUを開発したロックウェル社と合併してノースアメリカン・ロックウェル社なった。1996年にノースアメリカン社およびロケットダイン部門を含むロックウェル・インターナショナル社はボーイング社に売却された。

≪主要な機種/第二次大戦時≫
    ・B-25 ミッチェル(双発中爆撃機)
    ・P-51 ムスタング(戦闘機)
≪主要な機種/第二次大戦後≫
    ・F-82 ツインムスタング(双発戦闘機)
    ・T-6 テキサン(高等練習機)
    ・F-86 セイバー(ジェット戦闘機)
    ・A-5 ヴィジランティ(ジェット艦上攻撃機)
    ・F-100 スーパーセイバー(ジェット戦闘機)


カーチス社
 第二次世界大戦中には全米製造業者中、第2位を誇った航空機メーカーである。特にP-36及びP-40は特別に秀でた戦闘能力を持たないが低コスト大量生産に向き整備のしやすさからも、米国陸軍だけでなく各国連合国へ向けの大ベストセラー機種となった。しかし、戦後は民間航空機用のレシプロエンジン、およびプロペラの生産に集中していまい、開発するレシプロ機は駄作の連続、ジェット化の波にも乗り遅れ経営悪化し、ノースアメリカン社の一部門となる。そのノースアメリカン社もロックウェル・インターナショナル社を経て、ボーイング社に吸収された。

≪主要な機種/第二次大戦時≫
    ・P-36 ホーク(戦闘機)
    ・P-40 ウォホーク/キティホーク(戦闘機)
    ・SB2C ヘルダイバー(艦上急降下爆撃機)
    ・C-46 コマンドー(双発輸送機)
≪主要な機種/第二次大戦後≫
    ・XP-55 アザンダー(戦闘機)


コンソリーテッド社
 飛行艇を得意としたかつての米国航空機メーカー。特にPBYカタリナ飛行艇は連合国各国で愛された非常にすぐれた水上哨戒機であった。第二次大戦直後にバルティと合併、1943年にコンベア社になりF-102デルタダガー F-106 デルダダートを開発、後年ジェネラル・ダイナミックス社を経て、現在のロッキード・マーティンに吸収された。

≪主要な機種/第二次大戦時≫
    ・PYB カタリナ(双発飛行艇)
    ・PB2Y コロネド(四発飛行艇)
    ・B-24 リベーダー(四発重爆撃機)
    ・B-32 ドミネーター(四発重爆撃機)
≪主要な機種/第二次大戦後≫
    ・XP-55 アザンダー(戦闘機)


リパブリック社
 リパブリック・アビエーションとして、かつて存在した米国航空機メーカー。前身はアレキサンダー・セバスキーが1931年に設立したセバスキー社で、第二次大戦直後にリパブリック社に変名。リパブリック社は第二次世界大戦中に、P-40P-47と重馬力空冷エンジンを積んだ戦闘機開発で成功し、戦後もベトナム戦役で活躍したF-105を量産するがその後、量産発注機体は無く、1965年にフェアチャイルドに買収された。

≪主要な機種/第二次大戦時≫
    ・P-35 セバスキー(戦闘機)
    ・P-40 ランサー(戦闘機)
    ・P-47 サンダーボルト(戦闘攻撃機)
≪主要な機種/第二次大戦後≫
    ・F-105 サンダーチーフ(ジェット戦闘攻撃機)


チャンス・ヴォート
 現在のヴェート・エアクラフト・インダストリーズ社。ユナイテッド・エアクラフト社の一部門であったチャンス・ミルトン・ヴォートが、同じユナイテッド・エアクラフトの一部門であったシコルスキーと、合併による独立を果たしチャンス・ヴォート社を設立。F-4U初代コルセアで一気に米国有数の航空機メーカーとなり、その開発された機種は長く現役を勤める機種が多いのが特徴。1997年のA-7コルセア生産終了を最後に量産発注機体は無く、現在はミサイル等の武器メーカーの肌色が強い。

≪主要な機種/第二次大戦時≫
    ・SB2U ビンジケーター(艦上急降下爆撃機)
    ・OS2U キングフィッシャー(飛行艇)
    ・F-4U コルセア(艦上戦闘機)
≪主要な機種/第二次大戦後≫
    ・F-7U カットラス(ジェット艦上戦闘機)
    ・F-8F クルセーダー(ジェット艦上戦闘機)
    ・A-7 コルセアU(ジェット艦上攻撃機)


ベル
 第二次世界大戦中にP-39等の戦闘機を生産し、超音速実験機ベルX-1の製作も行っている。また、早くから回転翼機の開発を手がけ、戦後、米国のベトナム参戦時にヘリコプターメーカーとして成功した。1960年にテキストロンに買収され、現在残っているのはベル・ヘリコプター・テキストロンである。

≪主要な機種/第二次大戦時≫
    ・P-39 エアラコブラ(戦闘機)
    ・P-63 キングコブラ(戦闘機)
≪主要な機種/第二次大戦後≫
    ・ベルX-1 (有人音速ロケット)
    ・UH-1 イロコイ(ヘリコプター)
    ・AH-1 コブラ(ヘリコプター)
    ・OH-58 カイオワ(ヘリコプター)


ノースロップ
 ジャック・ノースロップが創業した米国航空機メーカー。1927年の第1次ノースロップ社設立を皮切りに、ロッキード社、ユナイテッド・エアクラフト社、ダグラス社等と吸収合併・分離を繰り返し、1994年にグラマンと合併してノーススロップ・グラマン社となった。第二次大戦中は夜間戦闘機P-61ブラックウィドウ。大戦後は、西側諸国各国に輸出されたF-5シリーズなどの有力な機体を開発した。また、ダグラスSBDドーントレスは、ジャック・ノースロップがダグラス当時に設計した機体である。

≪主要な機種/第二次大戦時≫
    ・P-61 ブラックウィドウ(双発夜間戦闘機)
≪主要な機種/第二次大戦後≫
    ・F-5A フリーダムファイター(ジェット戦闘機)
    ・P-38 タロン(ジェット練習機)
    ・F-5E タイカーU(ジェット戦闘機)
    ・F-20 タイガーシャーク(ジェット戦闘機)


ブリュースター
 1932年に設立されたのかつての航空機メーカー。振興メーカーながら第二次世界大戦直前に米海軍の新型艦上戦闘機の試作競争でグラマン社と争い、同社のF2Aバッファローが採用を勝ち取る事になる。ただし、正式採用されて大口発注しても会社規模が軍の要求する生産体制に答えられず、戦後直後の1946年に倒産。

≪主要な機種/第二次大戦時≫
    ・F-2A バッファロー(戦闘機)
    ・SB2A バッカニア(艦上攻撃機)


マーチン
 グレン・マーチン設計者により1912年設立された、米国かつての老舗航空機メーカー。第二次世界大戦では高速爆撃機B-26マローダを開発。また、イギリス空軍からの要求で双発爆撃機バルチモアも開発している。現在はロッキードに吸収合併されているが、のちにそれぞれが会社を設立するドナルド・ダグラス(ダグラス社設立)、ローレンス・ベル(ベル社設立)、ジェームス・マクドネル(マクドネル社)らの優れた設計技術者を輩出した。

≪主要な機種/第二次大戦時≫
    ・B-26 マローダ(双発中爆撃機)
    ・バルチモア(双発中爆撃機)
≪主要な機種/第二次大戦後≫
    ・XB-48 (ジェット重爆撃機)