さて問題です。第二次大戦機のフランス機で最優秀集戦闘機はどの機種でしょう。実は私もこのコラムを書くまでははっきりと判りませんでした。なんせ、第二次世界大戦序戦でドイツに国内を占領されてしまったのですから。
まず、機種をエントリーしましょう。モランソルニエMS.406とドボワチンD.520はフランス戦闘機としては有名ですね。あとはマルティンブロックMB.511とMB.152、コードロンCR.714、アルセナルVG.33、この6機種が配備数の大小こそあれ実戦配備されていました。
という事で性能緒元を作りました。ライバルであったメッサー
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MS.406C-1 |
D.520 |
MB.512C-1 |
C.714 |
VG.33 |
Bf109E-3 |
全 長 |
8.15m |
8.76m |
9.10m |
8.53m |
8.55m |
8.80m |
全 幅 |
10.71m |
10.18m |
10.54m |
8.87m |
10.80m |
9.90m |
主翼面積 |
16.00u |
15.97u |
15.00u |
12.50u |
14.70u |
16.35u |
総重量 |
2,726kg |
2,030kg |
2,020kg |
1,400kg |
2,050kg |
2,053kg |
エンジン |
イスパノイザ12Y |
イスパノイザ12Y |
ローヌ14N |
ルノー12Rol |
イスパノイザ12Y |
DB601A |
馬 力 |
860馬力 |
910馬力 |
1,080馬力 |
450馬力 |
860馬力 |
1,100馬力 |
最高速度 |
486km/h |
529km/h |
515km/h |
485km/h |
558km/h |
555km/h |
航続距離 |
800km |
998km |
600km |
900km |
1,200km |
655km |
上昇限度 |
9,500m |
11,000m |
10,000m |
9,100m |
11,000m |
10,300m |
武 装 |
20mm×1 7.5mm×2 |
20mm×1 7.5mm×4 |
20mm×2 7.5mm×2 |
7.5mm×4 |
20mm×1 7.5mm×4 |
20mm×2 7.9mm×2 |
総生産 |
1,081機 |
1,082機 |
600機 |
90機 |
48機 |
1,246機 |
シュミットBf109E-3を比較対象にしましたが、なんとフランス戦闘機は何れも重戦闘機タイプで翼面積がBf109E-3よりも小さくでビックリでした。あと、戦闘機に関する性能緒元で注意すべき項目は「上昇限度」。この数値はエンジンがアップアップしながらでも飛べる高度なので、戦闘機として機能する高度の上限ではありません。
モランソルニエMS.406は1938年に量産され第二次世界大戦勃発時の事実上の主力戦闘機。しかし最高速度も遅く運度能力も当時の他機と比べて劣っていて、序戦でのフランス降伏迄にBf109Eとのキルレシオは1対3でした。
MS.406の後継機として量産を急いでいたのはドボワチンD.520。運動性能がMS.520よりも優れていた(それでもあの垂直尾翼のサイズでは大した性能では無い)が、頑丈さも一定の能力を持っていた事もあり、フランス降伏後もヴェシーフランス空軍や自由フランス空軍の両軍で使用された経歴を持ちます。
MS.406を補助する形で配備されていたのがマルティンブロックMB.151とMb.152。この2機種は空冷エンジンを使って他の機種の生産を阻害しないと期待されたのだが、エンジン冷却不足や高高度性能が極めて悪かった駄作気味な機種であり、現にBf109Eに最も撃墜された機種でありました。
コードロンCR.714は木製構造の軽量機で、元々はスポーツ機から改造されたました。450馬力エンジンながらMS.406より優秀な最高速と旋回力を持っていましたが、上昇力が悪く、この機種を鹵獲したドイツ軍は練習機としてでしか使用しなかった機体でありました。エンジンを強化する派生型を望まれていましたが、フランスではそんな時間が与えられずに国土を占領されちゃったんですね。
アルセナルVG.33は国営アルセナルでいくつか開発された機種のうちの一種で、もたもたした生産のおかげでドイツに占領された時点では5機のみ配備されていた段階であった機種です。国営のクセに危機感が無く量産がおぼつかないのがアルセルナルの特徴です。しかし実機は搭載エンジンが決して高出力では無いのにも関わらず空力特性に優れ、その潜在能力は当時のフランス戦闘機で1の性能でありました。
このアルセナルVG.33は、派生型の計画が当初よりありました。それが実現してアルセナルVB10として完成したのが戦後の1947年。その設計は、操縦席の後ろにもう1基のエンジンを搭載し、1,500馬力×2の双発エンジンで二重反転ペラ。武装は20mm機関砲×4門と12.7mm機関銃×6基と超強力。ヴェシー政権下でももたもたと開発を行なっていたこの機種は1947年1月にやっと初飛行にこぎ着けた。テスト飛行してみるとまるでダメ。空力設計が古く、主翼も重武装の為に分厚く、搭載エンジンに見合わない低能ぶりで、しかも操縦系統が重く、地上滑走も慣れないと危ない位。間が悪いことに、試作1号機はテスト飛行中に空中火災を起こしてあえなく墜落。続いて二ヵ月後に試作2号機も同様の事故で損失。当然、開発中止となり残った機体は飛行停止処分となりました。
で、話をまとめますと、フランス機で最優秀戦闘機は、とりあえずアルセナルVG.33かな。
まあ、しかし空軍も含めて当時のフランス軍てのは、第一次世界大戦終戦してもずっとドイツを敵対視していた割には、戦争に対する危機感が欠けていた感じがするは私だけでしょうか? |